寂れた床屋(2)

日常生活

席に通され、鏡ごしに改めて店主を見ると、初老の不愛想な感じのおっちゃんだった。

不愛想な感じがちょっとこわいなぁと思いながらも、粛々とカットが始まった。

だが、すぐに「この店はアタリかも」と思った。

まず、髪の毛をとかす手さばきが非常になめらかであった。

次に、カットもなめらかで、おっちゃんの無骨な手とは不釣り合いな丁寧な仕事で驚いた。

よくあるガシガシ髪をいじられることや強引に引っ張りながらのカットを予想していたが完全な杞憂だった。

ひととおりカットが終わりシャンプーとなったが、ここでも優しく頭皮をマッサージする感じで髪を洗ってくれて、「この店主マッサージ師でもいけるんじゃないか」と思ったほどだった。

顔剃りも丁寧に行ってくれて、床屋の顔剃りが久しぶりだったことも相まってとても気持ちよかった。

また、私は陰キャなのでカット中の雑談が苦手であるため、ほぼほぼ無言だったこともありがたかった。

仕上げも細かく調髪してくれ、締めまで丁寧で感服した。

「最初は、不愛想な感じがちょっとこわいなぁなんて思ってごめんなさい」

心の中でつぶやいた。

終わってみれば、今までのカット経験の中でも上位に入るぐらい気持ち良く、このクオリティで3,500円は安いと思った。

帰る際には、店主が外まで出てきてくれ、やさしい笑顔で見送ってくれた。

私も、大満足だったため自然と笑みがこぼれた。

最初は寂れた店だと思ったが、帰りがけに改めて見ると、店先は掃除が行き届いており、手入れされた花たちが綺麗に咲いていた。

「こういう素敵な出会いがあるから人生って良いよね」と思いながら家路についた。

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